きょうも気分てんかん

大人になってからてんかんを発症しました。 いろいろと気分転換しつつ、日々懸命に生きてます。

魔法の杖

東京の人は、冷たいです。

特に朝の通勤中は、多くの人が満員電車に詰め込まれ、人で溢れた駅構内を、ぶつからないように神経をすり減らしながら早歩きしている為、他人にかまってなどいられません。
その流れに乗れない人がいても、誰も手を差し伸べません。
皆、疲弊しているし、攻撃されないだけマシなのです。


先日、私は、インラインスケートで河川敷を走行中、飛び出してきた子供を咄嗟に避ける際、バランスを崩して転倒し、尻もちをついてしまいました。
あまりに痛かったので、2日後に整形外科を受診し、レントゲンを撮影したところ、折れてはいないようでしたが、尾骨にヒビが入っている可能性がある、との事でした。

一般的に尻は脂肪が厚く、レントゲンでは細かい部分まで写らない事が多いそうで、私の場合も、ヒビがハッキリとは写っていませんでした。
しかし、尾骨の場合、どんなに詳しく検査して該当箇所を突き止めても、治療方法は「我慢して自然治癒を待つ」だけだそうです。
そんな説明を受け、「3週間くらい様子みてね」と、診察は終わりました。

ちなみに、他から聞いた話ですが。尾骨が折れ曲がってしまった場合、“肛門から指を突っ込んでグイッと曲げ戻す”らしいです。

 恐ろしい…

そんな事にならなくて、本当に良かったです。


そんなこんなで、私は、しばらくヨチヨチ歩きしかできませんでした。
GW中は良かったのですが、GW開けからの通勤を考えると、とても恐ろしくなりました。
どう頑張っても人並みのペースで歩けませんし、脚を前後左右に大きく動かせないので、「避ける」という行為が出来ません。
しかし、自分の身を守るために、自衛しなければなりません。

そこで、久し振りに杖を引っ張り出しました。
昔々、いざという時の為に、カタログギフトで選んでおいた杖です。
そんな、オシャレでも何でもないタダの杖を持ち、通勤ラッシュに挑みました。

 …スゴイ! 杖、最強じゃん!!

以前、てんかん発作直後にフラフラ感がすごくてヘルプマークを付けていた時は、「誰も何も気にしていないな~」と強く感じたのですが、杖は違いました。

朝のラッシュの中をゆっくり歩いていても、皆が、私にぶつからないように率先して避けてくれます。
席を譲って下さる方もいらっしゃいました。

 ヘルプマークより、魔法感スゴイ!

正直なところ、杖無しでも歩けました。
というか、杖で歩行が楽になるかといわれれると、ヨチヨチと自分のペースで歩くだけなら、さほど変わりません。
しかし、東京の日常は、道行く人との距離やスピードを気遣いながら歩行しする必要があります。
ラッシュ時の駅構内は特に、自分勝手に歩く事は許されず、動きの流れに乗らないといけない雰囲気があります。

そんな時、杖を使い、視覚的に“普通に歩けない”アピールをする事で、皆が「早歩きの流れ」から私を排除し、ゆっくり歩かせてくれます。
東京の人だって、それくらいの優しさは持ち合わせているのですね。

怪我をしていると、自分では周りに配慮しているつもりでも、上手くできない事が沢山ありますが、杖を持つことは、簡単に出来る“他人への配慮”の一種なのかもしれないなぁ、と思いました。

実のところ、杖を持つ事は、何となく恥ずかしいような、なんとも言えない気持ちではありました。
でも、「これがベスト!」と必死に自分に言い聞かせて、心を強くもったおかげで、順調に回復し、杖無しでも、通勤ラッシュの流れに乗って歩けるようになってきました。

早期回復は、魔法の杖のお陰かな。